2013年度JICAボランティア活動紹介

日系社会短期シニア ボランティア(ソーシャルワーカー)
中島 美樹(なかしま みき)

アスンシオン地区日系社会福祉実態調査終了  

皆様、こんにちは。 アスンシオン地区の日系社会福祉実態調査の分析のため、4月2日から半年間という期限で派遣されていました。半年という時間はとても短く、また、仕事量も多かったために、老人クラブの皆様方とゆっくり交流する間もなく、日本(神戸)へ帰らなければならないことが、本当に名残惜しくてたまりません。 アスンシオン地区の調査と並行して、今後の広域実態調査の把握ため、各移住地へも行かせていただきました。アスンシオン地区はじめ、各地区でうかがった移住の歴史や、皆様方の経験談は、非常に貴重なもので、何事にも勝る歴史書のごとく、時に涙しながら、身を乗り出してお話を聞かせていただきました。各地区の皆さま、本当にあたたかいおもてなしを有難うございました。 さて今回は、アスンシオン地区の実態調査で得られた結果の一部を紹介させていただきます。

実態調査の回収率は47%、有効回収数は378人分でした。一般的に回収率は20%~30%あれば良し、とされていますので、47%という数字は非常に高い割合といえます。協力して下さった皆様方の、関心の高さがうかがえます。 配布・回収に関しては非常に苦労したといえます。アスンシオン地区は住居地が点在しており、1通ずつ、日会職員が手分けして配布し、住所のわからない方については、いろいろな人に尋ねて届けたり、雨の中を回収作業に行ったりしました。また、老人クラブ寿会の理事の方々には、本調査実施に先立ち、調査内容や調査票記入の所要時間を確認するための、事前調査に御協力を頂きました。お忙しい中、本当に有難うございました。また、外出困難な高齢者のお宅には、日会職員はじめ、JICA日系社会シニアボランティアや日系社会青年ボランティアが訪問し、聞き取りによる調査をおこないました。     

【世帯状況】
「一人世帯」は10.8%、「夫婦世帯」は12.4%、「親と子の世帯(二世代)」、「親と子と孫の世帯(三世代)」が全体の73%を占めており、同居率が高いことがわかりました。高齢者と家族との関わりは、世代間での文化、習慣の違いについての差異が少なく、日常的に交流がおこなわれている様子が浮かび上がりました。一方で、同居していない若い世帯については、高齢者との交流が少ないという結果も出ました。
また、60歳以上の一人世帯もわずかながら増加しており、アスンシオン日系社会の中で、一人暮らしの方が孤立しないためにも、家族を含め、近くに頼れる存在がいるのか、の確認も必要だと思います。また、異世代交流の機会を積極的に作る事も大切になってくると思います。

【医療】
60歳以上の3割近くの方が保険に未加入であり、80歳代では半数の方が保険に入っていないことがわかりました。アスンシオン地区では、日系医師会の支援の下、健康診断がおこなわれていますが、健康診断を受診することで病気が見つかり、治療費等で家族に負担をかけるために受診をしたくない、という意見もありました。高齢になるにしたがい、あらたな保険加入は保険料も高額となり、契約できる項目も限られるため、高齢の方々が安心して医療を受けられる環境とはいえません。また、今回の調査では、50歳代を境に、病気をもつ方が増加傾向にあることがわかりました。加えて、健康に対する意識については、30歳代、40歳代の働き盛りの男性の意識が低いことがわかりました。将来の日系社会を支えるうえでも、病気や怪我をした際のリスクに対する備えや、定期的な健康診断についての再認識をおこなう機会が必要といえます。また、高齢者の方々が、安心して医療を受けられる環境にするには、どのような工夫が必要なのかについて、アスンシオンの日系社会全体で取り組む必要があるといえます。

【必要な医療・福祉の制度】
必要な医療・福祉の制度については、介護施設(老人ホーム)に対する要望が最も高いという結果が出ました。理由として、日系社会の中で介護施設が存在しないことへの不安感や、パラグアイ国の高齢者施設が、日系人の生活環境に馴染まないこと等があげられます。しかしながら、同居率の高さを考えると、本当に施設が必要なのか、入所希望の方が実際にはどれくらいいるのかについて、慎重な判断が求められると思います。

介護が必要な施設も大事ですが、支援が必要になってから入居するのではなく、自立しているうちに、安心できる環境の中で生活を送ることは、本人の自立を促し、生活の質を向上させるということを忘れてはいけません。むしろ、少数ながらも一人暮らしで身寄りのない方に対する支援としての、入所施設の存在が重要になってくるといえます。  今回の調査の質問内容は、全部で43項目にも及び、限られた時間の中での分析作業は、かなり難航いたしました(回答して下さった方も大変だったと思います)。しかしながら、十分とはいえないまでも、現在のアスンシオン地区の日系社会の福祉・医療に関する問題点や、今後の取り組みについての提案が出来たのではないかと思います。

尚、アンケート結果の詳細については、日本人会連合会高齢者福祉推進委員会にお問い合わせいただければ、資料提示等の説明があると思います。お手数をおかけいたしますが、日本人会連合会高齢者福祉推進委員会宛てに御連絡をお願いいたします。 TEL 021-555-770  あらゆる立場の方々が、支え合い、協働しながら、参加、利用のできる福祉社会作りを目指していただきたいと切に願っております。短い期間でしたが、本当に有難うございました。  

「パラグアイ日系老人クラブ連合会会報2013年10月号第203号」より

 
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