事業名: 日系高齢困窮者の支援
パラグアイで唯一戦前に開設されたラ・コルメナ移住地に最初の日本人移住者が足跡を印して2020年で84年の年月を刻むに至っている。また、戦後開設された移住地も60年(ピラポ)、59年(イグアス)と何れも壮年期を迎えており、営農・営業の基盤整備は概ね確立し、安定した生活ができるようになっている。
他方、日系社会の個人間の経済格差が拡大していることも否めない実情にある。
当連合会の重点施策は①日系高齢者福祉、②日本語教育、③地域振興の3本柱として取り組んできてはいるが、JICAより移住融資等の移住債権の無償譲渡を受けたことに伴い、連合会々員、非会員を問わず、日系社会全体に裨益する日系社会支援に範囲を広めて事業展開しなければならないとして、既に取り組んでいる。
念のため具体的に記述すると、移住債権の基金化、その基金運用益と日系社会が課されている自助努力とを有機的に組み合わせて、日系社会支援を展開するものであるが、その重点課題の一つとして、日系高齢者など生活困窮者支援がある。基金運用益財源のこともあって、積極的に対象者追跡がしていないものの現時点で把握できた範囲ではあるが支援している。
事業名: 日本文化の伝承活動と広報
パラグアイ日系社会には開拓初期から伝承されているのが和太鼓、鬼剣舞である。厳しい開拓ランプ生活の数少ない娯楽の一つとして地域住民に喜ばれてきた。歴代大統領の前でも披露されたと記録が残されている。その後、日本舞踊、さんさ踊り等の演目も増えて、各地区に愛好グループができて伝承活動に取り組んでいる。また、歩み道という日系社会で生れた文化もある。
移住地歴史と共に回数を重ねている一つが盆踊りである。地域によって日本まつり、夏祭り等と名称が変わっているものの恒例行事の一つとして定着しており、炭鉱ぶし、東京音頭、ソーラン節から徐々に演目も増えて現在に至っている。日系人の楽しみとしていた盆踊り、踊ったことのないパラグアイ人たちも踊りの輪に入って楽しんでいる光景が見られる。ヨサコイ鳴子おどりが一層祭りを盛り上げており、日本文化の広報と地域住民との融和と交流にも反映している。
日本まつりのもう一つの魅力は日本食である。色々な食べ物ブースができ、どこも満入りの盛況ぶりであり、これが地域社会の活動資金確保に反映するというシナジー効果が見られる。
日系社会には、野球、バレーボール、卓球、サッカーなどスポーツ活動が活発で全パ大会も行われている。お年寄りがゲートボールやパークゴルフを楽しむ光景がみられるのも日系社会の特徴であり、生活が豊かになった証しであろう。
2018年から約2年間、当連合会を拠点に、JICA日系社会青年ボランティアが日系社会を巡回して指導していただいた。同青Vが特技とするレパートリーが広く、日本語学校生徒を対象とした缶カラー三線や沖縄エイサーから、一般向けの切り絵、お茶、ゆたか着付け、生け花など日本文化がいかに幅広いことか改めて感じさせられた。これが、日系社会に根付き、伝承することを期待するものです。この日青VのJICA現地業務費の支援はなく、巡回の諸経費は要請先が負担することが原則としており、地域社会が主催する大きなイベントや着任・離任あいさつの経費は当連合会予算から支出している。
期待される成果:同日青Vの指導レパートリーも多く、加えて全日系社会を巡回指導するために指導回数は限られたが、初歩技術面は概ねの成果が見られたのではないかと思っている。今後は各分野のリーダー格がいかに伝承してくれるかに期待している。今後の課題としては、日頃、一所懸命練習に励んでも、紹介する機会が少ない、出演要請があっても経費の面で相談に応じられない事例が多く、そのための支援について積極的に検討したいと思考している。
事業名: 日系高齢者福祉支援のための事務局体制強化
JICAボランティア主導によりディサービスに着手したことが、パラグアイ日系社会の高齢者福祉事業のはじまりである。2009年度に第1次アクションプランを策定し、現在は第4次アクションプラン(2017~2020年)に基づき事業を推進している。
各地区に地元ボランティアグループが結成されて積極的に取り組んでいるが、同ボランティアの顔ぶれは結成当時と変わりないのが実態であり、同ボランティアの増員と後継者確保・育成が大きな課題となっている。
一部ではあるが、地元診療所スタッフを兼ねる福祉人材を配置して、専門知識を習得させると共に、日本人会と地元ボランティアとの調整役になっている好例もあり、人材育成事業支援の一環として、人件費の一部助成することで、福祉事業に携わる人材配置が一歩前進するのではないかと考えているところである。
全日系社会の取り組みとする全パ合同研修会、ブロック別研修の企画・実践のほか、パラグアイ国内の福祉施設、福祉支援の実例や機材・道具、日系人人材などの情報を収集して、各地区との中継役とする連合会事務局福祉部の役割は大きいものの、専従職員は主任一人だけで負担過重の状況にあり、事務局体制強化が急がれる。
とは言え、福祉専門の人材確保は難しく、当面の措置として、連合会福祉部相談役として非常勤嘱託を採用するに至った。
期待される成果:非常勤嘱託には、前述の全パ合同研修会、ブロック別研修の講師役など、パラグアイ日系社会福祉事業全般に携わってもらっている。地方で理学療法士とし て活躍しながら、研修会の企画、準備からJICA医療、福祉関連ボランティアとの意見交換など、都度アスンシオンを往復しているが、その年間回数は多い。パラグアイの専門校を修了しており、パラグアイ国の福祉事業にも明るく、テキスト作成においては、専門用語の助言など非常勤嘱託の役割は大きい。
事業名: 福祉人材育成事業・地区福祉活動支援事業
現在、第4次福祉事業アクションプラン(2017年~2021年)に基づき、高齢者の健康づくり・介護予防等への支援を念頭に、福祉人材育成のための研修会企画・実施や広報、啓発などに取り組んでいる。なかでも、各地区で高齢者支援活動に取り組んでいる地元ボランティアの人材確保、育成が最重点課題となっている。
人材確保は各団体にお願いして、人材育成は当連合会が推進する各種研修会で行うこととし、JICA本邦研修制度を活用して人材育成の促進を図ります。
全パの地元ボランティアが一堂に集い、各地区活動の情報を共有すると共にボランティア同士の交流によって得た知識を、それぞれの活動現場に還元することを目的に全パ合同研修会を年一回開催しているが、知識の向上、技術アップのため引き続き実施する方針である。
また、地元ボランティアの多くが主婦層であり、家庭を離れることができないという事情を背景に一泊二日の全パ合同研修への参加が限られていることから、日帰り研修の場としてブロック別研修を実施している。イタプアブロック(イタプア県下4地区)、セントラールブロック(アスンシオン、ラ・コルメナ)、東部ブロック(イグアス、エステ)及びアマンバイの4ブロックに分かれて、年二回開催している。
以上のとおり、日系社会高齢者福祉事業の最優先課題は高齢者福祉支援の人材確保・育成であり、実態を勘案して、各種研修会に係る諸経費を計上したものである。
〇全パ合同研修会
開催日:2019年6月4日~5日 場所 :日系社会福祉センター
参加者:55人
内容:研修会プログラムは別添の通り
〇ブロック別研修会
第1回ブロック別研修会:2019年2月~4月
第2回ブロック別研修会:2019年10月~11月
内容:各研修会の開催日・場所・内容・参加人数は別添の通り
〇地区福祉活動支援事業
対象地区:7地区
事業名: 連合会事務局の情報発信システムの整備と実践
日本人会連合会が推進する事業は従来からに加えて、新たな取り組みであるJICA移住債権の管理と同債権を基金とした日系社会支援事業があり、また、パラグアイ神原基金の管理運用と、その運用益により日本語教育の向上と日系社会後継者育成事業を推進するパラグアイ神原育英会との連携などと多岐にわたっている。然しながら、連合会執行部・事務局スタッフは恒常的負担過重の状態にあり、当連合会がかつて定期的に発行していた連合会会報、連合会便りについても中断しているのが実情である。また、諸般の事情から加盟団体においても最小限の事務局体制であって日常業務に追われているのも実態であり、情報共有システムの整備が課題となっている。
情報化社会の現下、インターネットや携帯電話の普及、情報技術の高度化に伴いインターネットが一般的に活用できるようにはなってはいるが、その利便は各団体会員に浸透しておらず、未だ回覧方式としているのが現状でもある。
他方、情報共有システムの基本とする連合会ホームページについては、個人名義で接続していた関係、それが切られて長いあいだ機能していなかったが、ようやくして連合会専有のホームページを立ち上げることができた。連合会職員の取り扱い研修も行われたところ、本年度はこれ等の諸経費を支払ったものである。
引き続き、事務局強化を図るための人件費補てんも視野に入れながら、リアルタイムで情報共有することに努めたいと思っている。日系社会コミニケーションの方途として、連合会便り、日本人会・文化協会便りの復活もあるが、そのための外部発注など、加盟団体とも協議、検討しながら改善策を探りたいと思考している。
期待される成果:連合会ホームページが立ち上がったのでリアルタイムで情報共有できるようになった。前ホームページに比べ、レイアウトも見やすくなったため、アクセス数の改善や活用方法を広げることができるようになった。
連合会予算事情もあって、外部に委嘱することは難しいことから、連合会スタッフにより徐々に入力することとしている。
事業名: 連合会事務局体制強化
日本人会連合会は従来事業に加えて、新たな取り組みであるJICA移住債権の管理および同債権を基金とした日系社会支援事業、パラグアイ神原基金の管理運用とパラグアイ神原育英会との連携等と幅広く、更に2021年度より日系社会福祉センターの管理運営にも関わることが決定されている。
改めて、連合会執行部、事務局業務を整理しますと次のとおり。
- 総務(人事管理、在パ日本大使館、JICAとの関連業務、加盟団体との関連事項の受・発信と業務調整)
- 財務(金銭出納、毎月報告書と監事監査の対応、銀行諸手続き、公的各種手続き)
- 福祉(日系高齢者福祉事業推進委員会の事業推進、各地区地元ボランティアとの連絡調整、国内各種研修会の企画と実践ほか)
- 教育(全パ日本語教育推進委員会の事業推進、日語教師会との連絡調整、国内各種研修の企画と実践)
- 地域振興対策
- 移住債権の管理業務と移住債権基金の管理運用と同基金による日系社会支援事業
- パラグアイ神原基金の管理運用とパラグアイ神原育英会事業との連携、同管理運用委員会、同育英会の事務全般
- アスンシオン学生寮の管理
- 本邦等各種研修(在パ日本大使館、JICA、国際交流基金、汎米研修など。)
近年、連合会が関わった大きな事業
1、移住80周年記念事業(記念式典の挙行と各種イベントの開催)
2、移住80周年記念誌の編纂
3、パラグアイ日系人人口センサス
4、日本パラグアイ外交関係樹立100周年関連事業の財務管理
以上のとおり連合会事業は広範かつ多岐にわたっている。また、2021年度より日系社会福祉センターの管理運営が加わる。
他方、事務局スタッフは事務局長、総務・財務、教育、福祉、神原育英会の事務体制となっているが、補助員含めて6名とアスンシオン日本人会との共益要員1名だけであり、職員は日常的に負担過重の状態にあり、事務局体制強化が喫緊の課題である。
移住融資の資金扱いが増大する中、IVA手続き、公的会計報告手続きや銀行手続きは、年々複雑煩雑となってところ、日系の公認会計士、税理士に業務委嘱している。
期待される成果:日系の会計士、税理士に業務委嘱することにより、適切に関係官庁への報告手続きができるようになった。また、連合会財務事務も点検、助言していただくことで事務局として助かっている。