お年寄りのことを知ろう~高齢者疑似体験を通して~
2015年10月16日金曜日、アスンシオン日本語学校で特別授業「お年寄りのことを知ろう~高齢者疑似体験を通して~」が実施された。企画したのは、アスンシオン福祉ボランティアグループ「さくら」で、児童1年生から6年生まで22人と保護者が2名、そして先生方が参加した。身体的な老化等についての大変さを理解し、どのようなお手伝いが必要か考えることを目的としている。
最初に、高齢者の身体機能の低下についてと、片マヒの症状について話を聞いた後、一般的な老化を体験するグループと、片マヒの状態を体験するグループに分かれた。それぞれ、身体が重い、腕や脚の関節が曲がりにくい、片腕が動かない、指先の感覚がない、白内障などで目が見えにくい、といった状態を体験する。ボランティアから、砂袋や水の入ったペットボトル、新聞紙、ゴーグルや仮面、三角巾、手袋など、装着する道具の目的と、着け方、歩くコースについての説明を受けた後、子供達はペアになって用意された道具を身に着けた。ペアの一人が最初に装着して体験し、もう一人は装着や歩行時に相棒として助け、コースを一回りしたら役割を交換することになる。
道具を完全装備すると、ロボットのような動きになるし、目もよく見えない、片手が使えないか、うまく物をつかむことができない状態になった。子供たちは、互いのぎこちない動きを見て、最初は笑って無邪気であった。
歩くコースには、階段の上り下り、落ちた本を拾って指定されたページを開く、または、片手で落ちているペンを拾って紙に自分の名前を書く、トイレの出入り、などがある。重りを着けて膝を固定した脚では、思うように動けず、階段では手すりをつかみながら一歩一歩…。「あー重い。」という声も聞こえた。床に落ちているペンを拾ってキャップを開けて、紙に名前を書くのは、全て片手で、しかも利き手と反対の手である。もう一方のグループの子達は、両手に手袋をした手ではページを思うようにめくれないし、セロファンを張り付けたゴーグルでは、ページ番号も見えにくい。「手が滑るよ…。」「これ何ページだろう?」と子供達。トイレの狭い個室に入って、動きにくい身体を回転させて座るのは、結構大変である。
ペアの相棒は、転んだりぶつかったりしないように、助けてあげることになっている。歩くときは腕をつかみ、「そこは段差があるよ。気を付けて」と声をかける様子も見られた。本のページ番号がよく見えない時には、「もうちょっとめくって」と言ってあげる。なかなかのお助けぶりである。子供達の感想は以下の通りであった。
・身体が動きにくく、立ったり座ったりするのが大変だった。
・階段を上るのがきつかった。
・目が見えにくくて、ページがめくれなかった。
・片方の手が使えなかったけど、どうにかなった。
・大変だったけど、ペアの子が付いていてくれたから、大丈夫だった。
・面白かった。
・特に問題なかった。普通に歩けた。
装着の工夫を考えさせるコメントに苦笑いもしたが、子供なりの素直な感想だった。自分自身のおじいちゃんやおばあちゃんがまだ若いこともあって、高齢者の心身の大変さはあまり感じない子供たちも多い。この体験を通して、身体が不自由であることへの理解と、必要な支援を考えること、そして現在、地元で取り組まれている高齢者福祉活動へ関心を持つ機会になってくれればと願う。
子供たちが書いた感想文をお読みください。