コロナ禍での日系地域福祉活動 ① イグアスなのはなデイサービス

~お年寄りの願いを叶える福祉活動の工夫~

外出制限下で利用者への支援活動がスタート
2020年3月に、パラグアイで新型コロナウィルス感染防止について外出制限の大統領令が出されてからは、イグアス日本人会デイサービス「なのはな」の活動も休止せざるを得なかった。それでも、デイサービス利用者が自宅でアクティビティを続けられるようにと、日本人会の理事や青年部の協力を得て、友情の日や敬老の日等に手紙とぬりえ素材やお菓子を届けていた。高齢者へのワクチン接種が進んできた頃合いをみて、利用者の様子をもっと知るために、なのはなボランティアの有志がプレゼントを届けながら食事や運動に関する調査を行った。利用者の方々はボランティアの訪問を歓迎し、外出ができずにストレスがたまっている、皆に会いたいなど、デイサービスで皆に再会することを願う声が聞かれた。

利用者の願いを叶えてあげたい
ボランティアと担当理事で会議をもち、アンケートの報告とデイサービス再開に向けた提案をまとめ、日本人会に伺いを立てたところ、ワクチン接種も進んでおり、大人数でなければ集まってもよいとの承諾が得られた。
これまで、70~90歳代の女性利用者による室内での手芸やゲーム・体操を中心とした活動であったが、屋外での少人数によるプログラムになることで、ボランティア間でも戸惑いがあり、実施に不安を隠せない雰囲気があった。
しかし、利用者の切なる思いを叶えたいという気持ちで、18名いる利用者を年代別で4つに分けることにし、まずは90歳代の利用者の方々の集まりを企画した。若い年齢層の方からではなく、90歳代高齢者から始めた理由は、この年齢の方々の方がより外出の機会が少なくて、仲間との交流を心待ちにしていたからであった。そして実施した結果を見て、次の方法を考えることにした。感染防止には十分に配慮したプログラムを練って、ボランティアリーダーが活動の趣旨を利用者家族にも説明し了承を得た。

『さくら公園』で仲間との再会
いよいよデイサービス初日、3名の高齢者と付き添いの家族1名、そしてボランティア4名がさくら公園に集まった。ちょうど桜が開花しており、お花見とおしゃべり、そして新しく設置されたばかりの運動器具のお試しにそれぞれの時間を30分とした。全体としては1時間半であったが、お花見をしながら散歩して仲間と楽しく過ごすことができたようで、「さくら公園にまた来たい、みんなと話をしたい」、「ボランティアの付き添いの下で幼児になって楽しみ、嬉しかった」、「こんな日は初めて、志を感謝します」と大変喜んでもらえた。

開催日程と参加者
① 8月17日(火) 9:00〜10:30  参加者:90歳代3名、家族1名、ボランティア4名
② 8月19日(木) 9:00〜10:30  参加者:89〜84歳4名、ボランティア4名
③ 8月24日(火) 9:00〜10:30  参加者:81〜79歳・90歳代7名、ボランティア5名
④ 8月31日(火) 9:00〜10:30  参加者:79〜72歳3名、ボランティア4名

ボランティアにとっても大きな喜びに
初の試みに参加者が心から満足してくれたことがボランティアの励みとなり、次のグループへの協力者も増えていった。年齢が若くて活動的な利用者の方が多いグループでは、まずラジオ体操をしてからおしゃべりや花見をするなど、体操の時間を多く取る工夫もしてみた。今回の取り組みで、これまでのような室内のデイサービスに限らず、屋外で開催できたことで、ボランティアも活動への考え方が変わった。また、90歳代から70歳代と年齢に幅があるので、同じメニューをするのは難しい事にも気づいた。利用者の希望を叶え、相手の喜びと、感謝の気持ちを直接感じることは、ボランティア本人にとって、とても大きな喜びとなり、その後のやりがいにつながる。

コロナ禍での多様な活動とそれを支える日本人会
「コロナ禍では、利用者の小さな望みを一つ一つ汲み取って、できそうなことから実現していくのは、お互いの信頼関係を育ててゆく。」とボランティアリーダーは言う。「そこでは、皆が同じメニューをこなすことにとらわれることなく、できる形を皆で探して作り上げる。平常時にデイサービスで求められるものと、コロナ禍で求められるものは違ってもよい」。そうした気づきから利用者のためのプログラムが企画できるのだ。
そして、これを後押ししたのが日本人会であった。日頃から、ぬりえ素材のコピーやプレゼントの用意等、デイサービス活動に対する支援があり、何でも相談しやすい関係であることは大きな存在である。さらに、若い人たちがとても熱心に公園の植樹や環境整備に取り組んでくれている。これら多くの方たちの協力の下でデイサービスなのはなの活動が成り立っていると感じる。

 

こちらもおすすめです